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書評ー悪の行方ー宮部みゆき著「ペテロの葬列」

 模倣犯以来、宮部みゆき氏の作品に期待を寄せてきたが、その期待は大きく裏切られることになる。もちろんよい意味でだが。

 今多コンツェルンという超大企業に務める杉村三郎は、ある日バスジャックに巻き込まれる。そのバスジャックの犯人が出した奇妙な要求と人質と交わした一つの約束。その場に居合わせた7人はこの犯人との約束によりその後の人生に大きな変化がもたらされることになる。人質たちのその後の群像劇、主人公の奥さんに隠されたある秘密も描きつつ物語は展開される。

 表題に「悪の行方」とつけさせてもらったが、ぜひこの作品に描かれている悪がどうなっていくのかに注目してほしい。ひとつの悪が人から人に伝わっていく。では、その悪の伝染をとめるにはどうしたらいいのか。インターネットで簡単に悪を広めることができる今だからこそ読んでほしい作品でもある。