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書評ービジネスマンとテロリストーエリック・アンブラー著「グリーン・サークル事件」

 えらく刺激的な表題をつけてしまった。しかし、全てを読み終えた後ならきっと腑に落ちるはずである。これは1人のしがないビジネスマンがひょんなことからあるテロリストと交流を持つことになり、そのテロを阻止する話だと。

 時代は1970年代、地中海地方で実業家として働くマイクル・ハウエルは、不幸な偶然からパレスチナ・ゲリラとして名をはせるサラフ・ガレドと交流を持つことに。しかも、あろうことかテロへの協力まで求められる。自らと会社、そしてテロに巻き込まれるかもしれないたくさんの命を救うために彼がとった行動やいかに。

 パレスチナや中東地方と聞くと小難しい話に聞こえるが、当時の中東の政治背景に無知な私のような者でも楽しめて読めたので心配無用。無論、予備知識があればなお一層楽しめることは言うまでもないが。

 「言葉とはなんと安易に出てくるものなのか、そしてその陰にはなんと多くの思考が隠されていることか。」

 -出典:エリック・アンブラー著藤倉秀彦訳「グリーン・サークル事件」,創元推理文庫,306