華麗なるギャツビーをはじめ数多く映画化されている不朽の名作、しかし、その私の中ではその高いハードルを越えることはなかった……
物語の語り手は、戦争帰りのニック・キャラウェイという青年、その彼が巨万の富を持つギャッツビーなる人物に興味を抱くことから物語は始まる。物語の中心は、このギャッツビーと語りて含めた周囲の人々との交友だが、視点は常にニック・キャラウェイであるところがこの物語のポイントである。
個人的に印象に残ったシーンは、毎晩大勢の人がギャッツビーのパーティーに出席していたのに、ギャッツビーの弔問にはほとんど訪れなかった所。唯一弔問に訪れたフクロウ眼鏡男がつぶやいた「なんともはかないものだ」というセリフは、物語の哀愁を漂わせる名シーンといえる。
「だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。」
-出典:スコット・フィッツジェラルド著村上春樹訳「グレート・ギャッツビー」,中央公論新社,325