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書評ー小さなことに忠実である者は大きなことにも忠実であるー貫井徳郎著「乱反射」

 法律には反していないが、モラルに反する行為というのは無数にある。例えば、教室の廊下を走ったり、水道の水を出しっぱなしにしたり…

 それが積もり積もって予期せぬ結果が生じるということを教えてくれるのが、この小説である。バラバラに見える様々な出来事が、やがてはいつの事件に収束する。点が線になることを味わえる快感は、この小説ならではと言える。

 おそらく現在小学校高学年から中学生ぐらいの子どもが読めば、「こんな考え方もあるのか」と考えさせられるだろうし、アラサー以上のおじさん・おばさんが読むとなんだか懐かしい気持ちを呼び覚ましてくれるはずである。

 個人的に注目してほしいのは、一番作中で自分のモラルのなさを反省していないと思われる人物が最後にはどうなるかである。最後の最後でこの人物だけが自分のモラルのなさを反省できたかなぜなのか考えてほしい。

 「法律ではなくモラルでは、罪ある人を糾弾することができないのだ。」

                      [一部引用:2009,乱反射,朝日新聞出版,434]