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書評ー夕木春央著「十戒」ーJW2世なら興味深く読める本

 モーセ十戒と言っても大多数の日本人には馴染みがないかもしれないが、最近話題のJW2世なら話は別だろう。その全てを言えなくても、なんとなくでもそれがモーセに与えれた経緯や概要はわかるかもしれない。

 とある浪人生が親族の遺産相続がきっかけで父親と共に見知らぬ離れ小島へ不動産業者などなどと小旅行をするところになる。ただの観光と思っている浪人生に巻き起こる大事件、相続することになっている離れ小島の土地に隠されたものとは、亡くなった親族に秘められた謎とは。

 一見、ご都合過ぎに思える展開もあるがそこはご愛嬌。謎を全て明かさずに終わる展開もある意味新しく感じた。

 そして、何より幼い頃から十戒について学んでいるJW2世にとっては、本来の十戒の意味に触れ、ある意味新しく感じるかもしれない。ぱっと見、十戒を軽んじているようで、実はとてもリスペクトしている作品でもある。

 何より、ここに出てくる登場人物とは違い、今、これを読んでいる宗教2世のほとんどは十戒に従うかどうかを己で決めることができるはずだ。そして、その十戒に従うとはどういうことなのか、そこに求められる覚悟もこの本を読めば感じ取ることができるだろう。

 親から押し付けられてものを全肯定するのでも全否定するのでもなく、自分で決めるための一助になるかもしれない。