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ヨベルの徳政令は現代でも有効では~ものみの塔2019年12月号の研究記事に寄せて~

 ヨベルといっても一般の人には「なんだそれ?」という反応だと思うので、解説すると、昔のイスラエル人が50年ごとに行っていた1年続くお祭りで、しかもその時に奴隷の人は自分の故郷に戻れて、借金がある人は帳消しになるという貧困世帯大喜びなイベントなのである。要するに50年の間で発生した貧富の差について、少なくともマイナスの人は一度ゼロにしますよという取り組みなわけで、一つの格差の是正のための取り組みともとれる。

 もちろん現代で全く同じことをするのは難しいし、今の日本には奴隷制度なんてないので当てはまらない点も多いが、マイナスの人がもう一度スタート地点に戻れるというのは、格差を解決するうえで一つのヒントを与えてくれている気がする。日本にも同じような制度で自己破産を思い浮かべた人もいるかもしれないが、決定的に違うのは、借金が棒引きになる時が決まっていたこと、全員一律にそれが適用されることである。借金がチャラになるからと思って軽々しく借金をする人も、申請の仕方がわからなくていないわけである。

 現代の日本では(世界でもそうかもしれないが)生まれたスタート地点がゼロやプラスでない人が少なからず存在するように思える。親から虐待される子ども、親から愛されない子ども、挙げれば枚挙にいとまがない。個人の努力によって生じる格差はしょうがないかもしれないが、スタート地点での差はできるだけなくしたほうが良い、そんなことを考えながらものみの塔を聞いていた。