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書評ー垣根 涼介著「極楽征夷大将軍」

 天皇陛下と聞くと、大人しいイメージがあるのは自分だけだろうか。もちろん、国民の象徴ということは百も承知だが、戦前を知らない世代からしたら平和の象徴という印象があると思う。そんな天皇陛下のイメージを180度覆すのが後醍醐天皇だ。何人も側室がいて、島流しにあっても自力で這い上がるタフさ加減。令和の草食男子が聞いたらさぞびっくりだろう。

 そんな後醍醐天皇が大活躍?する南北朝時代前後〜室町時代にかけて、主に足利尊氏・直義を中心に興味深く知ることができる。中でも足利尊氏・直義の性格の違い、合戦場面での対応力の差は興味深かった。神輿は軽ければ軽いほど良いというのは、後醍醐天皇のことを反面教師にしたのだろうか。足利尊氏室町幕府の将軍にまでなるわけだが、これほど実戦経験の少ない武将も少ないでのはないだろうか。そんな尊氏が晩年ある覚醒を遂げるわけだが、当時の平均寿命なども考えるとこれまた興味深い。500ページ越えと私がこれまで読んだ本の中でも、ダントツで長かったが、全く苦痛に感じなかったのは、筆者の視点も含めて興味深く書かれているからに他ならない。

 ちなみに私がついつい後醍醐天皇が気になってしまって冒頭に出したが、中心人物ではなく途中退場するので悪しからず