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書評ー安生 正著「ホワイトバグ」

 昨夏の酷暑、今冬の暖冬と異常気象の影響を肌で感じている人は少なくないだろう。そして、この異常気象の怖いところは果たして、今がその入り口に過ぎないのか、はたまた今後は横ばいになるのか予測がつかない所だ。そこに温室効果ガスの排出枠や環境に良いを隠れ蓑にした各国のEV覇権争いも相まって魑魅魍魎な形相だ。

 では、もし、その地球温暖化の先に人類共通の敵がいるとしたら。それがもしかしたら人類の存亡に関わる危機を招くとしたら。そんなフィクションをさもありなんと描くのがこのホワイトバグだ。まさか、登山家と植物学者と地質学の研究員のパーティーが地球を救うことになろうとは夢にも思うまい。フィクションであることは百も承知だが、と同時にある程度のリアリティを保持している。もちろん、もし、将来これが現実になったらと考えたらと恐怖でしかない。果たして人類は利害関係を抜きにして共通の敵に立ち向かうことができるのだろうか。それは、今の時代を生きる私たちに投げかけられた宿題と言えるだろう。