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書評ー偶然を必然に変えた男ー松本清張著「十万分の一の偶然」

 

 カメラマンの仕事の一つは、決定的瞬間を捉えることである。その際に演出はどこまで許されるのだろうか。果たして、世に出る決定的瞬間のシーンに作為はないのだろうか。そんな疑問を提示する作品である。偶然を必然に変えた男に下った報いとあまりにも悲しい結末、そして誰もいなくなったという言葉がふさわしいだろう。ラストシーンのいつまでも消えない野島崎灯台の回転明滅が主人公とフィアンセの愛を示すとしたらあまりにも悲しい。